相続登記手続きを司法書士に依頼する効用



依頼者(以下、「X」といいます。)は、定年を迎えた60歳過ぎの男性です。

Xの亡父について、相続登記が済んでいない土地と建物の相続登記申請手続きを受任しました。相続人は7人おり、Xは亡父名義の不動産を単独で取得したいという意向を持っていました。相続人の一人である30代前半の姪(以下、「Y」といいます。)は、Xが単独で取得することについて同意していました。

しかし、Yについては、登記申請手続に必要な印鑑証明書の取り付けが難航しました。何十年も会っていなかったことから、YはXに対して居所を知らせることに強い抵抗感を抱いていたためです。他方で、XはYから嫌がらせを受けているのではないかという疑念を抱いていました。


私は、当事者双方に思いやりのある行動を促し、互いの偏見を解消していく必要があると感じていました。そこで、Xには、Yが新型コロナウィルス発生という異常事態の中でも、委任状による印鑑証明書の取得手続きを試みるなど、協力しようとしていた事実を伝えました。またYには、Xが90歳代の母親の進行する老いと向き合い、実家の名義変更を一刻も早く終えたいという切実な事情を抱えていることを説明しました。

こうした情報を共有することで、双方が互いの立場を尊重し、協力するよう働きかけました。


相続登記申請手続に付随して、司法書士が遺産分割協議に関与することについては、単に登記申請手続が債務の履行にすぎず、中立的・媒介的に行われているというだけでなく、それ以上の効用があると実感しています。

たとえば、相続人間が疎遠で信頼関係がない場合や、仲たがいしている場合には、当事者の一方の肩を持てば遺産分割協議はまとまりません。